「クラスの子どもたちに本を読んでほしい」
「学級文庫をつくりたいけど、なんの本を置けばいいかわからない」
そんな悩みをもっている小学校の先生に向けて、絵本好き元教員の私が学級に置きたい本を紹介します。
今回は「低学年編」となっていますので、低学年のおすすめの本を知りたい方の参考になれば嬉しいです。(記事には一部プロモーションを含みます。)
この記事を書いた人
こんにちはまつこです。
私は2020年3月まで公立の小学校で教員として働いていました。
幼い頃から読書が大好きで、学校の図書館や地域の図書館にある本を大量に借りてきて読んでいました。
なぜ読書が好きになったかというと、絵本好きな母親の影響が大きいと思います。実家にも本がたくさんあり、毎晩寝る前に絵本を読み聞かせしてもらいながら育ちました。
今も趣味として読書を続けていて、年間200冊くらいの本を読んでいます。
「読書」は子どもの国語力や想像力など、様々な力を楽しみながら伸ばすことができます。
「子どもたちに本をたくさん読んでほしい」「本を読む習慣をつけてほしい」
そんな素敵な思いがあるのならば、ぜひ学級に本を置いてください。
学級に本を置くことの良さについては後述していますので、ぜひ最後まで読んでいただけると嬉しいです。
この記事の内容
この記事では低学年(1、2年生)の学級文庫におすすめな本を紹介しています。国語の学習等に関連性のあるものについてはさらに細かな学年も書き入れています。
特に「初任の先生」や、「普段からあまり絵本を読まない」という方に参考にしていただけると幸いです。
※高学年(5、6年生)向けのおすすめ本についてはこちらの記事をご覧ください。
matsuko-childsupport.hatenablog.com
※中学年(3、4年生)向けのおすすめ本についてはこちらの記事をご覧ください。
matsuko-childsupport.hatenablog.com
さて、ここからはまず「学級文庫とは何か」というお話を簡単にさせていただきます。
上の記事(高学年編)でも同じような説明をしております。高学年編(中学年編)はもう読んだから、低学年のおすすめ本を早く知りたい!
という方は、ここからスキップも可能です。
→ スキップ
学級文庫とは
学級文庫とは、児童・生徒が利用するために、学級に本を置くこと。また、置かれた本のことをいいます。
学級文庫のメリット
学級文庫のメリットとして、休み時間やテストの後など、「日常のちょっとした隙間時間に児童が本を手に取ることができる」ということが挙げられます。
もちろん各学校の学校図書館にも本がたくさん置いてありますが、休み時間に外でドッジボールをしている子どもたちにとって、学校図書館の本に触れる機会はあまり多くはありません。
学級に本が置いてあることで、子どもたちは気軽に本を読むようになります。
特に「本を読む」ことに抵抗感の少ない低学年のうちから多くの本に触れさせることはとても大切です!
もう一つのメリットとして、その学年の子どもたちの発達段階に合わせた本を置くことができるということが挙げられます。
生活科などの調べ学習で使用する本や、国語で扱う教材の同作家の物語、関連性のある作品などをすぐに手に取れる場所に置くことによって、学習にさらなる広がりをもたせることができます。
子どもたちに身につけてほしい教養や考え方などを本を通して伝えることもできるのです。
そんな「よさ」がありますので、ぜひ学級に本を置いていただけたらと思います。
学級文庫の作り方
まずはじめにすること
各学校によって学級文庫の形態は様々です。すでにその学年に合わせた本がクラスに置いてあるという学校もあるでしょう。
特に、低学年の教室には比較的絵本が置いてある印象があるのですが、皆様の学校ではいかがでしょうか?
もし各学級に本がない場合は、同じ学年の先生方に相談をして、クラスに本を置くメリット等をしっかりと伝えてから学級文庫作りをしましょう。
勝手に動いてしまうと、後々撤収しなければならないという最悪の事態も考えられます。
本はどうやって準備するの?
前提として、学級文庫に置く本は担任が自腹を切る必要はありません。もちろん、ご自身の本をクラスに置いて、読んでもらうことも良いと思います。私も自分の本を学級に置いている時期もありました。
でも、学校には「学校図書館」という立派な図書館がありますので、それを利用しない手はないでしょう。
学級に本を置きたい場合は、学校司書の先生に相談をしてみましょう。学校図書館の本の中から、クラスや学年に適した本を探してくれるはずです。
期間等は各学校によると思いますが、クラス単位または担任自身でも本を借りられる制度がありますので、それを利用しましょう。
「学級の子どもたちに本を読ませたいんです!」担任の先生にそう言われて嬉しくない司書の先生はいらっしゃらないと思います。きっと喜んで相談にのってくれますよ。
また、調べ物学習などで一人一冊本が必要、となる場合もありますよね。生活科で植物や動物について調べたり、工作の本を使ったりすることがあるかと思います。
大量に本が必要になる場合は、1ヶ月などの単位で市や区の図書館から借りられる仕組みもあります。
活用できるものはどんどん活用していきましょう◎
学級文庫におすすめの本(低学年編)
それでは、ここからは低学年の学級文庫におすすめの本をご紹介します。こうして選んでみると、「ど定番」ばかりになってしまったかもしれません。
本を選びながら、「名作」はいつまでも「名作」なのだなあ、ということを改めて感じました。
『ふたりはともだち』著:アーノルド・ローベル 訳:三木卓
仲よしのがまくんとかえるくんを主人公にしたユーモラスな友情物語を5編収録。読みきかせにもふさわしいローベルの傑作です。小学校の教科書に採用されています。
(文化出版局HPより)
有名な「がまくんとかえるくん」シリーズです。短編集になっていて、この本の中に入っている『おてがみ』というお話が小学2年生の国語の教科書に載っています。
この作品を一言で表すと、がまくんとかえるくんの「のほほんとした友情物語」です。
「がまくんとかえるくん」シリーズはこの『ふたりはともだち』以外にも『ふたりはいっしょ』『ふたりはいつも』『ふたりはきょうも』の全部で4冊の本があります。
一つ一つのお話があまり長くないので、『おてがみ』を学習する時期には、シリーズの本を学級文庫にも置きつつ、授業の合間に読み聞かせをしても良いと思います。
このシリーズの中で私が好きなお話をひとつ紹介します。
一作目の『ふたりはともだち』の中に入っている『なくしたボタン』というお話です。
あらすじを簡単に紹介すると、
がまくんがお散歩中にボタンを1つなくしてしまいます。
かえるくんはがまくんの「なくしたボタンを探すたび」に付き合ってあげるのですが、見つかるのは形や色の違うボタンばかり。自分のボタンが見当たらないがまくんは、ついに怒って帰ってしまいます。
ところが、家に帰ったがまくんがふと家の中をみると、なんと家の床の上に「なくしたボタン」が落ちていたのです。お散歩中になくした訳ではなかったのですね。
怒って帰ってしまったがまくんは、かえるくんに「悪いな」と思ったのでしょうか。たくさん見つけた自分のものではないボタンを上着に縫い付けて、カラフルなジャケットを作り、かえるくんにプレゼントをしたのです。
かえるくんは大喜び!
めでたしめでたし。
というなんともかわいいお話です。感情の起伏が激しいがまくんですが、「かえるくんのために」とジャケットを作るなんて、とっても粋な計らいですよね。
二人の温かい友情にグッときます。
『かいけつゾロリシリーズ』著:原ゆたか
キツネのゾロリと、ふたごのイノシシ、イシシ・ノシシがくりひろげる、大ぼうけんの物語。
わるいことをたくらんで、いたずらをしかけては、いつもしっぱい。
どんなことがあっても、くじけず、いつも前向きなゾロリは、子どもたちのヒーローです。
私自身も小学生の頃に読んでいた本です。
なんと今年で35周年だそうで…!私よりも歳上で驚きました。笑
この作品も、シリーズになっています。シリーズ全般おすすめです。
私は「失敗しても諦めない心」をこの本から教えてもらいました。
ゾロリたちは、大人が困るようないたずらをとにかくたくさん考えて、実行していくのですが、それが結果的に困っている人を助けたり、世の中のためになったりと、良いことにつながることもあるのです。そこがまたなんとも面白いです。
学校図書館にも必ず置いてある、子どもたちが大好きな本です。
オリンピックを題材にした本や、妖怪たちが出てくる本など、楽しく色々なことに触れることができるのもおすすめする理由です。
『りんごかもしれない』著:ヨシタケシンスケ
テーブルの上にりんごがおいてあった。 ……でも、……もしかしたら、これはりんごじゃないかもしれない。もしかしたら、大きなサクランボのいちぶかもしれないし、心があるかもしれない。実は、宇宙から落ちてきた小さな星なのかもしれない…… 「かんがえる」ことを果てしなく楽しめる、発想絵本。
(ブロンズ新社HPより)
この本は絵を見るだけでも楽しいので、また安定して字を読むことができない1年生にもおすすめの本です。
「りんご」だと思っていたものも、見方を変えるとさまざまなものに見えてきます。
もしかしたら「みかん」も「みかん」じゃないかもしれない、この「鉛筆」も…?!と自分でも色々なパターンを考えることができて楽しいです。子どもたちの想像力を自然と育ててくれる本です。
読みながらともだち同士でお話をしてみるのも面白いですよね。
『バムとケロのにちようび』 著:島田ゆか
こんな あめのにちようびは サッカーも すなあそびも できない…
バムとケロがいっしょなら たいくつな にちようびも たのしいことばかり!
(文溪堂『バムとケロ』ホームページより)
こちらの作品もシリーズものです。(シリーズものが多くてごめんなさい。)
実はこの本は、主人公のバムとケロ以外にも登場人物がいるんですよ。
ページの細かな部分をよーくみると、白と黒の犬「ヤメピ」や、耳が3つある謎の生き物「おじぎちゃん」など、小さなキャラクターたちが毎ページに写っているのです。
主軸になっているストーリーももちろん面白いのですが、この小さなキャラクターの動向を探るだけでもかなり面白いです。
文章には全く表れていないのですが、絵を見ることで新しいお話が生まれてきます。
大人より子どもたちの方が、絵をよく見て細かなところに気付けるということも…!ご自宅で親子で読む(見る)のもおすすめです。
このシリーズの中で私が一番好きなお話は『バムとケロのさむいあさ』というお話です。このお話にはバムとケロの他に、「カイちゃん」というアヒルが登場します。
オチまで完璧なので、気になる方はこちらもぜひ手に取ってみてください。
『ドラえもん』著:藤子・F・不二雄
日本を代表する漫画家藤子・F・不二雄先生の傑作作品『ドラえもん』。未来の国からやってきたごぞんじ、ネコ型ロボットのドラえもんが親友ののび太とともにくりひろげる生活ギャグまんが。四次元ポケットから取り出される不思議な道具で日本中を笑いに包みこむ。しずかちゃんやスネ夫、それにジャイアンも元気いっぱい。ワクワクドキドキ、キミを心温まるドラえもんワールドにご案内!
(小学館HPより)
誰もが知る漫画です。ここであえて「漫画」をもってきました。
学校という場所なので、「漫画」はちょっと…。
と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、本への「とっかかり」としての漫画は私はありだと思っています。
特にドラえもんは本当におすすめです。
ドラえもんを読んでいると「文字を読めるようになりたい!」という思いが自然と出てきます。なぜなら、漫画なので絵から「なんとなく」ストーリーは読めるのですが、「道具の効果」やそれによって「のび太やドラえもんがどうなっていくのか」ということは文字が分かった方がより面白いからです。
また、学校での話や友達との話がとても多く、失敗ばかりの「のび太」に共感がもてる子どもたちも多くいます。
学校で少々うまくいかないことがあっても、「頑張ってみようかな!」と勇気をくれる漫画です。
『へんてこもりにいこうよ』著:たかどのほうこ
ヘンテ・コスタさんがつくった〈へんてこもり〉に、はじめて出かけたそらいろ幼稚園の仲よし4人組。そこで出会ったのは、まるぼ!?
(偕成社HPより)
「へんてこもり」が舞台のとっても不思議なお話です。「ファンタジーの世界にようこそ」と子どもたちを誘ってくれているような本です。
簡単にあらすじを紹介します。
お話は、へんてこもりに遊びに行った子どもたちが楽しく「しりとり」をするところからお話が始まります。
「ぞう」「うし」「しろながすくじら」「らくだ」「だちょう」「うま」…
「ま」が思いつかないブンタくんが言ったのは
「まるぼ!」
「まるぼ??」みんなそんなどうぶつは聞いたことがありません。
「やっぱりいないか。ああ、負けちゃった。」
ブンタくんがそう言ったとき、ガサガサと音がして……
「まるぼ」を名乗る謎の生き物が出てきたのです。
……続きが気になりますよね?!
「まるぼ」をはじめ、この後にも聞いたことがない生き物がたくさん出てきて、大人でも楽しめる本です。
文字数もあまり多くはないので、ひらがなが読めるようになる1、2年生におすすめです。
『アッチ・コッチ・ソッチの小さなおばけシリーズ』著:角野栄子
アッチはレストランにすんでいる食いしんぼうのおばけ、コッチはとこ屋さんにすんでいるおしゃれなおばけ、ソッチはあめ屋さんにすんでいる歌の好きなおばけ。アッチ、コッチ、ソッチのまわりでは、いつも「ドキドキ」と「ワクワク」がいっぱいです!
1979年に『スパゲッティがたべたいよう』でスタートした「アッチ・コッチ・ソッチの小さなおばけ」シリーズは、魅力的なキャラクターと自由な発想のストーリーで、子どもたちの大きな支持を集めました。親から子へと世代を超えて読み継がれています。
(ポプラ社HPより)
『魔女の宅急便』の原作をはじめ、数々の名作を世に出している角野栄子さん。
この小さなおばけシリーズも、40年以上前からずっと子どもたちに愛されている作品です。かわいいおばけたちが登場する楽しいお話が多く、シリーズ全般を通しておすすめです。
中でも私が好きなお話はこちら。『おばけのソッチ ぞびぞびぞ〜』というお話。
歌を歌うのが大好きな「ソッチ」が「のどじまん大会」に出ようとする話です。
「ぞびぞびぞ〜」というのは、「ソッチ」の歌声なんですが、その出来栄えはというと…笑
とってもかわいい本ですので、ぜひ読んでみてください。文字が大きくて低学年にもとても読みやすくなっています。
『しっぱいに かんぱい!』作:宮川ひろ 絵:小泉るみ子
人に言えない失敗は、だれにでもあります。達也のおねえちゃんは、小学校のリレーで、失敗をしています。朝ごはんも食べられないくらいおちこむおねえちゃん。そんなとき、おじいちゃんから電話がかかってきて…。
(童心社HPより)
「しっぱい」してしまったら嫌だなあ〜。
小学校に上がって、そう考えながら過ごしている子どもたちも多いと思います。
この作品は、そんな子どもたちに、
「大人もたくさん失敗をしてきたんだよ。」
「失敗してもいいんだよ。」ということを伝えられる本です。
最近は特に自己肯定感が低い子どもたちが増えていると言われています。そんな子どもたちに一度は読んでほしいお話です。
絵本なので、先生の読み聞かせに使っても良いかもしれません。この本を読むことを通して、失敗を恐れずに色々なことに挑戦する子どもたちに育ってほしいですね。
『くらべてみよう どうぶつの赤ちゃん』監修:ますいみつこ
動物の赤ちゃんが誕生し、成長していく様子とともに、その動物ならではの魅力をバラエティーに富んだ写真で紹介する写真絵本シリーズです。
(ポプラ社HPより)
『どうぶつの赤ちゃん』という教材が光村図書の1年生の教科書に載っています。
教科書に載っている動物以外の赤ちゃんについても調べることができるようにと、各学校の図書館にもきっと置いてあるシリーズです。
写真がとても綺麗で、動物の赤ちゃんたちがとにかくかわいいです。
動物好きな子どもたちはとても多いですよね。このシリーズはお話がある本ではないので、テストやプリント終わりなどの隙間時間にパラパラとめくる本として最適です。
シリーズは全部で20冊あります。お気に入りのどうぶつの赤ちゃんを探してみてはいかがでしょうか。
『いやいやえん』作:中川李枝子 絵:大村百合子
元気だけど、わがままできかんぼうの保育園児・しげるが主人公のお話集。しげるがなんでもいやだ、いやだと駄々をこねて、「いやいやえん」に連れてこられる話、しげるたちが積み木でつくった船でクジラをとりにでかける話、山のぼりで山の果物を食べすぎてしまう話、赤いバケツをもって保育園にやってきた小ぐまの話など、全部で7つのお話がはいっています。
1962年に出版されて以来、多くの子どもたちを夢中にさせた童話の傑作。
(福音館HPより)
主人公が幼稚園の子どもなので、幼稚園で読み聞かせをすることも多い本です。
文字が主体で挿絵も少なめなのですが、文字が大きく読みやすいため、低学年の子どもたちは自分で読むことができます。
私も幼稚園の頃は母親に読み聞かせをしてもらい、小学生になってからは自分で読んでいた思い出の本です。
今まで読み聞かせをしてもらっていた本を自分で読むことができるようになると、自分でも成長を感じられてとても嬉しいですよね。
おわりに…
尊敬する司書さんから教わったのですが、
「本を読む子どもたちを育てるためには、すぐに手に取れる場所に本を置いておくこと。」これが一番です。
ぜひ、担任の先生方には「自分がかつて好きだった本」や、「子どもたちにも心からおすすめした本」をクラスに置いていただきたいです。
学校によっては「学級に本を置かない」という方針のところもあるかもしれません。
そんな学校でも大丈夫!学級文庫以外にも、子どもたちが本に親しむことができる方法はあります。
たとえば、授業の中で学校図書館にたくさん連れていったり、授業の前に読み聞かせの時間を作ったりすることなどです。また、連休前などの自分のおすすめの本を紹介する時間をとるというのも良いかも知れません。
子どもたちがたくさんの素敵な本と出会えますように。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
まつこ